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[書評] 非常識な建築業界 「どや建築」という病 (森山高至)

written by a2c_s on 2016-03-04

『非常識な建築業界「どや建築」という病』森山高至 を読んだ。

著者が新国立競技場問題でザハ案が実現不可能であることや、コンペの問題点などをTwitterやBlogで発信されていたのを以前読んだことがあったので買ってみた。

内容は新国立競技場の問題よりも、現在の建築業界が意匠重視に偏りすぎていることの問題点やゼネコンの現場での技術継承がうまくいっていないことなど幅広く現在の建築業界の問題を戦後からの歴史を踏まえて書いており、単なるバッシングを超えた著者の見識を感じた。

特に、以下にして現在の建築家の自己表現ばかりが強調された著者の言うところの「ドヤ建築」が生まれるようになったのかの解説は面白かった。

著者も書いているようにこの本は「駄馬の鑑定法」を教えるもので名建築については代官山のヒルサイドテラスなどごく一部のものが取り上げられているにすぎない。 それでも十分に面白いのは実際のところ僕らがしばしば出会うのは「ドヤ建築」が圧倒的に名建築より多く、身近に感じるところが多いからだと思う。ドヤ建築も見る分には楽しいものも多いわけだし。

最後にシンプルな建物の外観に関するルールを作ることで町の活性化につなげた滋賀県長浜市の「黒壁スクエア」が取り上げられているのは、この手法こそが比較的広く全国に適用できる名建築と考えているからなのだろう。

非常識な建築業界 「どや建築」という病 (光文社新書)

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